2014年10月28日火曜日

マーラーメダルって? kubelik と Chicago

おぉ、寒い。まるで冬の風だ。とはいえ、ストーブを出すのも癪だし、面倒だし・・・。てかまだ扇風機が出しっぱなしだし。手の指先がかじかんで、タイプしにくいよ。

さて、引き続きクーベリックのマーラーを聴いてます。クーベリックのマーラーを初めて聴いたのは8番でした。コレが良かったんだな。それで全集を買った。8番は全集録音の最後、71年の録音である。録音場所はミュンヘンのドイツ博物館大会議場(コングレスザール)。我が家のシステムで聴く限りは、録音はこの巨大な編成を余すところなく捉えてはいない。トゥッティではさすがに混濁気味のところも見受けられ、少々聴き苦しいのではあるが、折々、美しいオケ・合唱の響きが聴ける、CD1枚に収まってしまう快速系。第1部が21m53s、第2部が52m03sの計74m56s。しかし最近は1枚で収まってしまう演奏も多くなった。高速ながらも前のめりではないが、推進力に溢れた演奏で、やはり「熱」を持っている。

さて、渡辺護はこの全集のライナーノートに、
クーベリックは1950年から1954年まで、アメリカのシカゴ交響楽団の指揮者をつとめたが、多くのマーラー作品をこの都会では初めて演奏し、彼はマーラーメダルをさずけられたのである。
                                                                                                                と書いている。

マーラーのディスクのライナーを読むとよく出てくるこのマーラーメダル。どういうものかと思い、国際マーラー協会のHPをみてみた。
このマーラーメダル、マーラーの作品の紹介や理解、協会の活動に貢献した人、団体に贈られるもので58年に設立されたものらしい。これまでの受賞者は以下の通り。

Previous recipients of the Mahler-Medal:

  • 1958  Carl Schuricht
  • 1958  Eduard van Beinum
  • 1958  Concertgebouworkest Amsterdam
  • 1958  Rotterdam Philharmonisch Orkest
  • 1958  Eduard Flipse
  • 1958  Herm. J. Nieman
  • 1960  Rafael Kubelik
  • 1960  Dimitri Mitropoulos
  • 1966  Utrecht Orkest
  • 1966  Dresdner Philharmonie
  • 1967  Leonard Bernstein
  • 1969  Wiener Symphoniker
  • 1971  Bernard Haitink
  • 1974  Kyrill Kondraschin
  • 1974  Joseph Krips
  • 1974  Hans Swarowsky
  • 1979  Residentie-Orkest Den Haag
  • 1980  Wiener Philharmoniker
  • 1980  Alice Strauss - posthum Franz Strauss
  • 1980  Christa Ludwig
  • 1980  Dietrich Fischer-Dieskau
  • 1980  Carlo Maria Giulini
  • 1981  Städtisches Symphonieorchester der Stadt Münster
  • 1981  Alfred Walter
  • 1982  Vaclav Neumann
  • 1982  Eleonore and Bruno Vondenhoff
  • 1984  Federico Sopeña Ibáñez
  • 1985  Claudio Abbado
  • 1985  George Alexander Albrecht
  • 1985  Niedersächsisches Staatsorchester Hannover
  • 1987  Donald Mitchell
  • 1996  Marjana Lipovšek
  • 1996  Rafael Frühbeck de Burgos
  • 1997  Edward R. Reilly
  • 1999  Thomas Hampson
  • 2005  Henry-Louis de La Grange
  • 2005  New York Philharmonic Orchestra
  • 2005  MahlerFest Colorado
  • 2005  Gustav Mahler Committee Toblach
  • 2007  Vladimir Fedoseyev
  • 2007  Knud Martner
  • 2007  Peter Weiser
  • 2012  Jiří Rychetský
                                      引用: 国際マーラー協会HPより  http://www.gustav-mahler.org/

一覧をみると、クーベリックは指揮者としてはシューリヒト、べイヌム、フリプセについで4人目。バーンスタインより7年も早いことに驚かされる。意外なところでは74年のクリップス!現在の認識では全くマーラーを振りそうもないように思われるが、いったいどんな功績があったのだろうか。謎であるが、70年~73年の間、ウィーンSO.の芸術顧問を務めていたようなので、そこで何かあったのではないかと思う。クリップスのマーラー、聴いてみたいものである。そのウィーン響も69年にメダルを授与されている。67年のウィーン芸術週間のマーラー特集でウィーン響とオーストリア放響が中心(分担した割合は不明だが放響よりも多かったのではないか?)となったことがメダル授与の理由ではないかと思う。また逆に、いわゆるマーラー指揮者であるショルティやクレンペラーには授与されていない。団体ではオランダのオケが多く、メンゲルベルク以来のマーラー演奏の伝統を感じる。

渡辺はライナーのなかで「多くのマーラー作品をこの都会(シカゴ)では初めて・・・」と書いており、クーベリックがマーラー作品のシカゴ初演を多く手掛けたことを示唆している。興味が沸いたので、ネットで探してみたらありましたよ。演奏会記録。結論からいうと、渡辺の記事は誤り。確認できたところでは50年12月に5番、51年4月に大地の歌、52年1月に1番を指揮したのみであった。渡辺がいうように数多く演奏しているという印象は持てなかった。この他には69年1月に客演して9番を振っている。
クーベリック退任後、ライナー、マルティノンの時代を経てショルティが音楽監督となったことはご存じのとおり。
その後のシカゴ響のマーラー演奏はクーベリックによるオーケストラの地ならしができていたからこそだった?なんて想像をしてみたが残念ながらハズレだったようだ。
そうすると、60年のクーベリックのメダル授与の理由とは何なのだろう。謎である。

2014年10月24日金曜日

助けてー‼ Kubelik GM Sym.5&6

雨があがって、秋晴れである。今回は音楽の話が中心です。

さて、このところ、クーベリックのマーラー三昧。一時、アウディーテからライブ録音が多数発売されたこともあって、クーベリックのマーラーといえばそちらがメジャーになってしまった感がある。ライブ盤が出た際、「クーベリックはライブの人、スタジオでは大人しかった」といったような評論が出ていたものだ。そんな単純な話ではなかろうに。アウディーテのライブも良いのだけれど、グラモフォンの全集(F00 29068/77)もなかなかに聴きごたえがある。今回はそのお話。

クーベリックといえば晩年はCBSに移ってモーツァルトやブルックナーも録音したが、レコーディングキャリアのスタートはEMIだったが、その後のほとんどをグラモフォンで過ごしたところはジュリーニと同じ。ドヴォルザークやスメタナ、シューマンなど今も名盤とされるものも多い。マーラーの全集もその中の一つ。なかでも特に5番と6番が好きだ。
67年から71年にかけての4年間で集中的に録音され、CBSのバーンスタイン盤に次ぐ、いやアブラヴァネルに次いで3番目か?と思う。この全集の特徴を一語でいえば、「熱」「焦」だろうか。「熱」の読み方は「ねつ」でもいいし、「あつっ」でもよい。躁うつ気質であったマーラーの「躁」の部分がよく表されているように思う。なにか熱に浮かされたような落ち着きのなさをこの全集を聴いていると感じる。何かに追っかけられているようであったり、見えない何かに怯えているような、不安や不穏といった感情が掻き立てられてしょうがない。これほどまでに不快を感じる演奏はない。しかしこの不快がこの演奏の醍醐味。不安や不穏は気持ちの高揚をもたらす。聴いているあいだ、気持ちが高ぶりっぱなしで一時も気持ちが落ち着かない。満足感ある不快なのだが、聴き終わるとこれが結構、ぐったりときてしまう。

5番は元来、マーラーの交響曲のなかでも7番と並ぶ躁的側面を持ち合わせている曲。作曲に取り掛かった1901年、ウィーンPOの監督を辞任、その直後に5番の作曲に取り掛かり、アルマと出会い婚約、とまるでジェットコースターのように感情も上がり下がりしたはずだ。はじめの谷が深いほど次に登る山は高くなる。アルマとの婚約はきっと多幸感MAXであったろう。冒頭のトランペットの3連符で始まる葬送行進曲から輝かしいフィナーレまで、そのまんまである。嬉しかったんだろうな。そんな曲をテンポよく、キビキビと前のめりに演奏されるとしかし何か尻の座り、安定を欠いた印象が強くなる。多幸感に不安をちょっと足すとたちまち幸せな気持ちに影がさし、不信感にグラッときて頭グルグルである。
恐ろしや~!
もちろん、マーラーもこの幸せが続かないであろうという不安は承知していたはずで、1902年3月、アルマと結婚、7月に5番を完成(初演は1904年ケルン)。11月には長女マリア・アンナが誕生している。計算が合わない気もするが・・・。幸せを手に収め絶頂のはずの翌1903年7月には6番「悲劇的」に着手している。
クーベリックは6番も高速前のめり演奏で(不安・恐怖を)煽る。そう、6番には手に入れた幸せを失う恐怖、がある。幸せであるがゆえの現実的な恐れ、例えば子供を失ってしまうのではないか?結婚が破たんしてしまうのではないか?これは後に現実となるのだけれど。ただ、恐怖に怯えているだけではなく、その恐怖に立ち向かい恐怖に打ち勝とうとする葛藤もクーベリックはしっかりと描き切っている。

クーベリック/BRSOの演奏はそれをストレートに自分の心のど真ん中に投げ込んでくる。受け止めるか受け止められないかギリギリの速球を。よって自分にとっては名盤、なんである。

ちょっとクーベリックの「熱」にあてられてしまったか?おしまい。

ちなみに、6番のタイムを比較すると・・・ (データはブックレット記載に拠る)

1楽章
2楽章
3楽章
4楽章
Total
Kubelik (G)
   2107
   1142
   1135
   2630
   7054
Inbal (D)
   2422
   1446
   1434
   3002
   7944
                                        
やはり、高速であるが、提示部の反復の有無による差があるかもしれない。ちなみに最速はミトロプーロス盤、らしいが未聴、と思っていたら持っていたヨ。Totalで72分55秒。やはりクーベリックが最速の男か?

1~10番、さすらう若人の歌が入って10枚組。大地の歌はこの全集に含まれないが、
70年のライブ録音がアウディーテから出ている。演奏会で取り上げて、録音という
流れであったようなので、計画はされていたが何らかの理由で流れてしまったのかも。



2014年10月18日土曜日

K.Böhm/VPO LvB Symphonies

めっきり寒くなりました。我が愛車には外気温計がついている。先週の朝の通勤時には19℃だった気温も昨日は14℃。だんだんと冬が近づいているなあ。

このところ、LPを聴いている。もうとっかえひっかえ、である。
前回のブログで報告したとおり、AT666をターンテーブルシートにしている。いろいろと迷ったが、今のところこの形で落ち着いている。悩みといえば、AT666を吸着面(表側)を上にしてそのまま使うか、ひっくり返して使うか、である。表側は吸着を前提としているので構造上LPのレーベル外周に当たる部分ととLPの外周部がシーリングゴムとなっていてわずかに浮き上がっている。吸着すればシートとLPは密着するのだが、吸着していないのでシートとLPは密着しない。DS20によって押しつける形とはなるが、わずかながら浮いているものと思われる。ひっくり返して裏側を上に向けて使うとLPとしっかり密着した形となる。
このAT666。金田式ターンテーブルでは吸着せずLPを浮かせて使うようだ。金田式については全くの不勉強で、恥ずかしながら良くわからない。LPを浮かせることでシートの影響を排除できるというのがミソであるようだ。それに倣い浮かせて使うと確かにシートの影響は少ないようだ。良く言えば広がりのある響きの豊かな音なんだけれど、なんだか腰の座らない感じにも聴こえる。音が全体的にざわつく感じもする。カートリッジもかなり動く。裏側を上にして使うと締まった音になるけれど、やや詰まった感じとなる。こちらはカートリッジはあまり動かない。好みの問題なのか。好みとしては裏側を上にして使うほうだろう。
そんな訳で、LPをとっかえひっかえひっくり返し、ついでにAT666をひっくり返して聴いている。

レコードの反りの改善について。これまでは反りの度合が比較的大きい廉価盤やデジタル期の厚みの薄い盤を中心に聴いていたが、古い厚みのある盤も何枚か聴いてみた。厚い盤はまた盤も硬い。よって、外周を押さえつけてもその効果は薄い盤に比べて少なかった。前にも書いたけれど、やはり反りの改善はバキューム式のほうが効果は高いようである。反っているレコードは中心部から反っているので外周を押さえつけるだけではだめで、盤全体を押さえつける必要がある。上から全体を押さえつけるわけにはいかないので下から吸着して盤全体をターンテーブルシートに圧着するバキューム方式は理にかなっている。使用経験からバキューム方式は反りの9割がたを矯正するが外周方式は7~8割いったところにとどまるだろうと思う。外周方式が廃れた理由もその辺にありそうである。動作の確実性とメンテナンスは外周方式。性能はバキューム方式だ。あとは外周方式では使用できないターンテーブルとカートリッジがあること。SPUなどは持っていないが、底面の幅がありすぎてリングの内縁に当たってしまい、ちょっと使えないのではないか。そのあたりも問題か。

最近、集中的に聴いているのはベームのベートーヴェン。国内盤の中古(3番のみ海外盤)を中心に7番以外をなんとか集めることができた。初期盤を聴いたことがないので音質の差がわからないけれど鑑賞には十分な音質だと思っている。70年代ウィーンPO.のグラモフォン録音を代表するレコードの1つ。しかし、本当にこのコンビは凄い。まさに阿吽の呼吸、である。ベームのオケに対するドライブというかVPOの操られ方というのか、正に絶妙としか言えない。どちらかというとVPOがベームを上手く乗せているのが正しい気がする。いや、そんなことは承知しているベームがまた上手く乗っかっている振りをしているのか。まあこんなコンビはもう二度と現れないだろう。ベームは小言爺さんだったようで、特に新人の奏者を見つけるとキッと睨み付け、ミスするとネチネチと苛めていたそうだ。そんな時団員はまた始まった、と思い、グラーツの出身でなくてもこの新人はグラーツの出身ですとベームに紹介する。するとグラーツ出身のベームはそーかそーかと機嫌が良くなりリハーサルが進んだという。そんなベームをみて団員はニヤニヤしていたという。

ベームにはBPOと録音した3番がある。流麗ではないがBPOの合奏力の高さと相まってきびきびとした格調高い演奏であるが、このVPO盤はより歌心に溢れ余裕ある演奏となっている。3番や9番はわずかにだれ気味の様子。しかし6番は素晴らしい。ピリオドアプローチを採用したり小編成で速いテンポで小気味よく演奏されるベートーヴェンは好きだし、普段はこちらを良く聴くけれど、時には攻撃的にすぎることがある。最近はこうした大編成の従来のアプローチによるゆったりとしたベートーヴェンは少なくなった。でも時々聴くと心が暖かくなって良い。

画像の上はAT666をひっくり返してターンテーブルに載せているところ。下はちょっと珍しいカートリッジ。ピンボケで申し訳ないけれど、SONYのVC-20。コンポセットのプレーヤーの付属品だったものを中古で入手。空芯コイルのMC型カートリッジ。CBS録音にマッチする?と思っている。すっきりとした音調。
本当はXL-55(PRO)が欲しいところ。




2014年10月10日金曜日

軽針圧カートリッジの逆襲

トリオの外周スタビライザーDS-20が来て5日。手元にあるカートリッジをとっかえひっかえ聴いている。
所有カートリッジはMM型がオルトフィンの2MRED、シュアーのM97xE。MC型がオルトフォンMC20W、ソニーVC20、オーディオテクニカAT-F3、デンオンDL-103、モノラルカートリッジのオーディオテクニカAT-MONO3/LPの7つ。メインはこのうちのMC20Wが務めている。よってアナログディスク再生における音決めはMC20Wで行っている。このMC20W、価格はそれなり(自分にとっては十分に高価)だが、音の傾向はあんまり神経質に音溝をこする感じではないけれど情報量に不足はなく、レンジ感ほどよく、ふくよかに音楽を再現してくれるので、お気に入りである。他のカートリッジはそれぞれに良いところもあるがMC20Wに及ばず、あまり出番が無かった。
DS-20の効果か、盤の回転が安定しているとそのほかのカートリッジが今までよりいい音で鳴ってくれるようになった。とくにシュアー。先のブログにも書いたけれど、これが大変身。スペック的にもレンジは広くない。 音もパッとしない地味娘ちゃんだったが、相変わらずパンチは効いていないが今はスーッと音が伸びとっても清楚な感じで溝に刻まれた音をそのまま再現してくれる。同じMM型の2MREDは残念ながら外周スタビを載せるとどうしてもボディが触ってしまい、そのままでは使えなかった。あえて使うとなればハウジングを少し削る必要がある。後々針交換の際にBLUEへのグレードアップを考えていたが断念することにした。そのほかソニーのVC20、オーディオテクニカAT-F3も上手く鳴ってくれるようになった。
考えてみると、M97xE・VC20・AT-F3はいずれも標準針圧1.5g前後の軽針圧カートリッジ。音溝の追従性は高いけれど盤面のコンディションと回転の影響を受けやすいはずで、盤面と回転が安定したことで性能をしっかり引き出すことができてきたのではないかと考えている。
MC20Wの牙城は脅かされつつある。依然、優位ではあるがその差はかなり縮んだことは確かである。

さてDS-20。この5日間、使ってみた感想だが、盤面の安定(反りの改善)という点ではやはりバキューム方式が優れているようだ。いくつか反りのあるディスクにDS-20を載せてみたが、わずかに盤面の浮沈が確認できた。反りがなくなるわけではなかった。バキューム方式は吸着すれば効果は絶大なのだが、いかんせん吸着したりしなかったりと、動作にムラがありすぎた。メンテナンスも難しいというか不可能。取り回しのし易い(基本的にメンテナンスフリー)のと反りの軽減の確実さで自分は断然DS-20に軍配を挙げる。

もう一つ、さらなるグレードアップとして、眠っているその吸着式のAT-666をターンテーブルシートとして活用してみた。ジュラルミン製でこちらも1.3kg。ターンテーブルとDS-20と合わせて5.25kg。かなりの重量増が見込める。さらに回転が安定。カチッとしたエッジの立った音ながら全体に静かになった印象。
しかし、しか~しである。この分厚いターンテーブルシートのせいでレコード盤がスピンドルの上の方にきてしまい、スピンドルとレコードのセンターホールが密着しない。いわゆる偏芯が生じてしまう。そうするとカートリッジは微妙に左右に動いてしまって音にも影響しそうだ。
う~ん、ナイスアイデアなんだがなあ。もう少し様子を見てみようと思う。

明日から3連休。今から何を聴こうかワクワク・ウキウキである。





2014年10月5日日曜日

到ちゃこ! TRIO DS-20

先日、オークションで落札したトリオ DS-20が届いた。
先日も書いたように落札額は予算をはるかにオーバーしていたので妻に不足額を補てんしてもらうハメになってしまったが文句も言わずに許してくれた。感謝。

レコードの反り対策に、春にオーディオテクニカのバキューム式のスタビライザーを買った。当初はちゃんと吸着してくれていたが、だんだんと吸着力が弱まり、しまいには全く吸着しなくなった。ゴム部分の劣化が原因であるがあまりにも確実性に欠けるのではないか。熱処理によってディスクそのものの反りを直す器械も考えたけれど、これも確実に直るわけではないようだし、失敗してよりベコベコになることもあるということで、このDS-20に賭けることにした。結論から言うと結果は上々、と言っておこう。

落札直後は自分にとっては予定にない高額な落札だったこともあり疲労と自己嫌悪であったが、いざ届いてみると、やっぱり嬉しい。そんな自分にまたまた自己嫌悪、である。
このDS-20、外周スタビライザー(本体)、内周スタビライザー(いわゆるディスクスタビライザー)に外周スタビ本体の位置を決めるゲージからなる。本来の使用方法はまず、ターンテーブルにセットしたLPの上に位置決めゲージを載せ、本体をセットした後ゲージを外して内周スタビを載せるのだが今回、手に入れたブツにはこの位置決めゲージがついていない。ただ載せてもカートリッジに接触して針とびを起こす可能性もあるのでこの位置決めは重要なんである。その点が面倒くさいのだが。
早速に寸法を測ってボール紙にセンター穴を開けただけのものだけれど、とりあえずの位置決めゲージを作成した。
オオッ!シュアのMe97xが飛び切り良い音で鳴る‼‼ なんとなく高音域が詰まったような感じの地味な娘という印象だったのに、とっても清楚できれいな娘に変身していて驚いた。

このDS-20の効果としてはまず、レコードの反りを矯正しターンテーブルとレコード盤との密着度を高めるとともに、1.3kgの重さによって慣性モーメントが向上する。それによってワウフラッターの軽減とS/N比のアップが期待できる。実際聴いてみると、すっかり反りが直るわけではないが、カートリッジの上下動が少なくなってワウフラッターはかなり減少しているようだし、音の小さいところ、楽器の少ないところでは確実に静かになった。
我が家のKP-1100はターンテーブルをKP-5050のものに換装し重量を1.9→2.6kgに増している。今回、これが4.0kg近くまで重量がアップしたことになる。ターンテーブルの回転は問題なさそう。回り初めと停止の時間が長くなったくらい。心配は軸受け。まあこれくらいなら大丈夫だと思う。TRIOの純正品だしね。

テストに使用したレコードはジュリーニ/CSOのマーラーの交響曲第9番。中古で手に入れたけれど反りがあって、これまでは上手く鳴ってくれなかったもの。前よりも重心が下がった感じで低音も良く出ている。上出来である。


外周スタビライザーの本体部分。思っていたよりもかなり重いアルミ製


即席の位置決めゲージを載せ四角に合わせて本体を載せる
本体はディスクのヘリ1㎜ほどに引っ掛けるように載っている


ゲージを外し、内周スタビを載せて準備完了


カートリッジの上下動は少なくトレースも安定している



2014年10月4日土曜日

ぼんくら三昧 物欲の鬼、再び

すっかり秋、かと思いきや、日差しは強い。風は冷たく、寒暖の差が大きい。大汗かきの自分には、過ごしやすい反面、かいた汗で体を冷やして風邪をひきやすい時期。用心、用心。
このところ、ぼんくら三昧である。ぼんくらとは宮部みゆきの小説の題名。このシリーズ「ぼんくら」「日暮らし」「おまえさん」と続いている。前にも書いたけれどこの秋、NHKでドラマ化(10月16日午後8時から、全10回)される。それを前にもう一度読み返しているところなわけだ。現在は「日暮らし」下巻に突入したところだが、これがもう、泣けて泣けてしょうがない。涙で活字が見えない。すっかり登場人物に感情移入してしまう。宮部みゆきの筆致は何か丹念に織られた布のようで、その模様の見事さ、手触りに見入ってしまう。この「日暮らし」の中には子盗り鬼、というのが出てくる。子供をとって食う鬼である。我が家にも出た。物欲の鬼が、でた。

先日、ネットオークションに探していたアナログプレーヤーのアクセサリーがあった。すでにディスコンで前々から探していて、どうしても手に入れたかった。オークション終了の間際に入札。このまま落札かと思われたその時、終了時間が延長された。再度入札するとまた延長である。どうなってんだ~!どんどんと釣り上がっていく落札価格。三度延長の末、何とか落札。予定していた額の2倍をつぎ込んでしまった。正直、競り合っていた相手に譲っても良かった。けれども最後の最後に相手は乗ってこなかった。落札できたものの、嬉しい感情は無く疲労と激しい後悔が残った。あの延長30分の間、自分は物欲の鬼となっていたに違いない。
競り落としたアクセサリーは近日中には届くだろう。その時、自分の中の物欲の鬼は笑う。