2014年10月24日金曜日

助けてー‼ Kubelik GM Sym.5&6

雨があがって、秋晴れである。今回は音楽の話が中心です。

さて、このところ、クーベリックのマーラー三昧。一時、アウディーテからライブ録音が多数発売されたこともあって、クーベリックのマーラーといえばそちらがメジャーになってしまった感がある。ライブ盤が出た際、「クーベリックはライブの人、スタジオでは大人しかった」といったような評論が出ていたものだ。そんな単純な話ではなかろうに。アウディーテのライブも良いのだけれど、グラモフォンの全集(F00 29068/77)もなかなかに聴きごたえがある。今回はそのお話。

クーベリックといえば晩年はCBSに移ってモーツァルトやブルックナーも録音したが、レコーディングキャリアのスタートはEMIだったが、その後のほとんどをグラモフォンで過ごしたところはジュリーニと同じ。ドヴォルザークやスメタナ、シューマンなど今も名盤とされるものも多い。マーラーの全集もその中の一つ。なかでも特に5番と6番が好きだ。
67年から71年にかけての4年間で集中的に録音され、CBSのバーンスタイン盤に次ぐ、いやアブラヴァネルに次いで3番目か?と思う。この全集の特徴を一語でいえば、「熱」「焦」だろうか。「熱」の読み方は「ねつ」でもいいし、「あつっ」でもよい。躁うつ気質であったマーラーの「躁」の部分がよく表されているように思う。なにか熱に浮かされたような落ち着きのなさをこの全集を聴いていると感じる。何かに追っかけられているようであったり、見えない何かに怯えているような、不安や不穏といった感情が掻き立てられてしょうがない。これほどまでに不快を感じる演奏はない。しかしこの不快がこの演奏の醍醐味。不安や不穏は気持ちの高揚をもたらす。聴いているあいだ、気持ちが高ぶりっぱなしで一時も気持ちが落ち着かない。満足感ある不快なのだが、聴き終わるとこれが結構、ぐったりときてしまう。

5番は元来、マーラーの交響曲のなかでも7番と並ぶ躁的側面を持ち合わせている曲。作曲に取り掛かった1901年、ウィーンPOの監督を辞任、その直後に5番の作曲に取り掛かり、アルマと出会い婚約、とまるでジェットコースターのように感情も上がり下がりしたはずだ。はじめの谷が深いほど次に登る山は高くなる。アルマとの婚約はきっと多幸感MAXであったろう。冒頭のトランペットの3連符で始まる葬送行進曲から輝かしいフィナーレまで、そのまんまである。嬉しかったんだろうな。そんな曲をテンポよく、キビキビと前のめりに演奏されるとしかし何か尻の座り、安定を欠いた印象が強くなる。多幸感に不安をちょっと足すとたちまち幸せな気持ちに影がさし、不信感にグラッときて頭グルグルである。
恐ろしや~!
もちろん、マーラーもこの幸せが続かないであろうという不安は承知していたはずで、1902年3月、アルマと結婚、7月に5番を完成(初演は1904年ケルン)。11月には長女マリア・アンナが誕生している。計算が合わない気もするが・・・。幸せを手に収め絶頂のはずの翌1903年7月には6番「悲劇的」に着手している。
クーベリックは6番も高速前のめり演奏で(不安・恐怖を)煽る。そう、6番には手に入れた幸せを失う恐怖、がある。幸せであるがゆえの現実的な恐れ、例えば子供を失ってしまうのではないか?結婚が破たんしてしまうのではないか?これは後に現実となるのだけれど。ただ、恐怖に怯えているだけではなく、その恐怖に立ち向かい恐怖に打ち勝とうとする葛藤もクーベリックはしっかりと描き切っている。

クーベリック/BRSOの演奏はそれをストレートに自分の心のど真ん中に投げ込んでくる。受け止めるか受け止められないかギリギリの速球を。よって自分にとっては名盤、なんである。

ちょっとクーベリックの「熱」にあてられてしまったか?おしまい。

ちなみに、6番のタイムを比較すると・・・ (データはブックレット記載に拠る)

1楽章
2楽章
3楽章
4楽章
Total
Kubelik (G)
   2107
   1142
   1135
   2630
   7054
Inbal (D)
   2422
   1446
   1434
   3002
   7944
                                        
やはり、高速であるが、提示部の反復の有無による差があるかもしれない。ちなみに最速はミトロプーロス盤、らしいが未聴、と思っていたら持っていたヨ。Totalで72分55秒。やはりクーベリックが最速の男か?

1~10番、さすらう若人の歌が入って10枚組。大地の歌はこの全集に含まれないが、
70年のライブ録音がアウディーテから出ている。演奏会で取り上げて、録音という
流れであったようなので、計画はされていたが何らかの理由で流れてしまったのかも。



4 件のコメント:

  1. ショルティはどうなのよ?

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  2. うなぎさん
    おはようございます。
    ショルティ、実はですね・・・。第1楽章から順に、21min03sec,12m32s,15m34s,27m28s,total76m37sです。聴いた印象ではかなり速いのですが第3楽章は以外と歌っているなあと。やはりクーベリックが最速か?こうなると70分台を切る演奏があるのか注目です。

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  3. ごめんください。
    クーベリックのソニー録音は均衡が維持された穏健な印象ではあるものの、達観した人が造り出した完成品の趣があるように思います。ライブ録音の激昂全開とは別人のようでした。
    5番にこのような内面性を言い表し、七味さんは流石…深いですね。

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  4. kazuさん
    いつもありがとうございます。実はこれまでクーベリックの5番6番の高速前のめり演奏は腑に落ちなかったところがありました。最近になって自分なりに腑に落ちてきました。違うかもしれませんが・・・。しかし、他の曲は速いながらも穏当なテンポなんです。そんなに前のめりではないですね。
    それにしても音楽を聴くにはいい、秋晴れが続いていますね。

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