2016年11月3日木曜日

Bernard Haitink / LPO RVW Comp. Sym.

全集魔ハイティンクの、ショスタコ全集と並ぶ最良の仕事といっていいかと。
LPOの音楽監督を務めていた70年代後半に始まったショスタコーヴィチの交響曲全集の録音。途中、RCOとLPOを振り分けて完成したハイティンク。LPOとの分はRCOと比較される非力さを指摘されることも多いが、LPOと録音している4番をはじめ、7番、10番、15番は一連の交響曲の中でも重要な曲。余計、耳は厳しくもなろう。言うほど悪くないと思う。
このRVW、録音は音楽監督時代の70年代ではなく80年代半ば~90年代後半にかけて。
メジャーレコード各社ともCD期となってから一通りのレパートリーの録音、リリースが落ち着いたのか相次いでRVWの交響曲全集が録音されるようになった。RCAがプレヴィンの再来を期したのか、スラトキンと。テルデックはアンドルー・デイヴィスと。英デッカはロジャー・ノリントンとの全集を企画していたようだが、これは途中で頓挫してしまった。デッカにはモノラル期ボールトの旧全集(これも素晴らしいが)しか無いというRVW好きには堪らなく残念な状態だ。
本音をいえば、ハイティンクにはデッカと録音して欲しかった。
本場英国のEMIはボールト、ハンドリーに続く第3の全集をハイティンクに託した。ここに独墺系指揮者による唯一のRVW全集が完成した。

演奏はハイティンクの中庸の良さともいうべき部分が出ていて、全体に安定感があり大らかで見通し良い演奏に仕上がっている。不協和音や激しいアタックの多い4番や6番ではやや物足りない感じがしないでもないが、総じて各曲とも完成度は高い。
84年に第7番「南極交響曲」で始まった録音は第2番「ロンドン交響曲」、第1番「海の交響曲」と断続的に行われ、約5年の中断を経て、第5番、第3番「田園交響曲」、第4番、第6番、2000年の第8番、第9番でフィニッシュ。
最後の9番はこの全集中でもっとも成功しているし、9番のディスクの中でもベストではないだろうか。演奏は中断後のほうが総じて出来が良い。より懐深くなり、RVWの語法を我が物にした感がある。前半の7番・2番・1番は叙事詩的な趣のある曲。後半は作曲者の心象が強く反映されている曲ばかり。特に8番・9番は晩年の作品で、その内省的傾向はより顕著でなかなか作曲者の心象に分け入ることが難しい曲だ。8・9番を最後に持ってくる辺りもハイティンクの熟慮が伺われる。
9番の終楽章、最終部は波が寄せては返すような楽想を持つ。この辺りはショスタコの15番とは形は異なるものの、同じような心象を思い起こさせる。

RVWの普遍的、インターナショナルな演奏と言ってよいハイティンクの演奏。
ドメスティック(英国の指揮者とオケ)な録音が圧倒的に多いRVWもショスタコ同様に現代の交響曲の古典になりつつあるように思う。ショスタコも今では世界中で録音されるようになった。その先鞭をつけたのはハイティンク(の全集)であろう。RVWもそうなって欲しいし、いろいろなオケや指揮者によるRVWの全集を聴いてみたいが、多分、無理だろう。もう現れない、と思う。その意味でもこの全集はハイティンク最良の仕事なのだ。

EMI 5 86026 2

4 件のコメント:

  1. 寒くなりました。昨日は一時大雨の中、収穫祭でした。
    RVW、なかなか近寄りがたかったです。記事を拝見し、帰宅して、前に買ったプレヴィン/ロイヤル・フィルの3番を聴いていました。あまり大音量にせず、静かに鳴らしていましたがよかったです。全集に挑戦してみたくなりました。どの全集がよいか、情報集めです。

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  2. おはようございます。
    ホント寒くなりました。妙高山の裾野まで白くなってましたね。
    この何を買おうか?という情報を集める過程が何気に楽しいですよね。

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  3. 七味とうがらしさん、こんばんは。
    RVWと書かれて誰だかわかりませんでした(笑)。ヴォーン・ウィリアムズ、今まで聴いたことがありませんが、記事を拝見して聴いてみたくなりました。ハイティンク、昔は評論家の言葉を真に受けて聞きませんでしたが、全方位的に良い仕事をしてますね。

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  4. ばけぺんさん
    ありがとうございます。寒くなりました。こちらは今日、霙まじりの雨模様です。
    RVWはyoutubeに結構アップされてます。個人的には6番がおススメなのですが、バルビローリの5番あたりもなかなかデスヨ。
    ハイティンクは正直、あまり・・・。ですがこのRVWは無難と言えば無難、でも良い仕事です。記事にも書きましたが中断後の6曲はかなり良い出来、と思います。

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