2025年11月16日日曜日

ワルターのマーラー Sym.9

ずっと食傷気味であったマーラーをこのところ聴くことが増えてきた。
少し前に買ったワルターの交響曲第9番のCD。コロンビア交響楽団とのCBS録音。なぜかずっとスルーし続けていたがついに、という感じ。この曲の初演者の演奏というのに。
単にこれまでめぐり合わなかっただけではある。

この録音、春に中古の米盤LPを買ってはみたものの、チェンジャー仕様で2枚組で盤の交換が面倒臭く、最初は良い演奏だなあと思ったがあまり聴かなくなり。
CDを買ってからは格段に扱いやすいこともあって取り出す機会が多い。最近9番はもっぱらこのワルター盤ばかりだ。
LPもそのうち買い直したいと思っている。
さて、ワルターの9番と言えばウィーンフィルとの戦前の録音がある。第2次世界大戦前の不穏な世情を反映して緊張感がある反面ウィーンフィル特有の甘美さもあって、と世評は高い。ウィッチも持っている。演奏も素晴らしいのだがいかんせん録音が古い。普段聴くにはちとツライ。
その点、このコロンビア交響楽団との録音は良好なステレオ録音で聴きやすい。
CBSによる一連のワルターによるステレオ録音はすでに引退していたワルターを口説き落として臨時編成のオケを使い、マエストロの体調をみながら録音された。なので全盛期を過ぎた指揮者が臨時のオケ(アメリカ西海岸の奏者たち)を振っているという事であまり評価されない向きもある。
ウィッチとしてはクラシック音楽の聴き始めがワルターのこのシリーズの1枚であるベートーヴェンの田園(これは現在でも名盤の誉れ高い1枚)であったので良質なステレオ録音でまとまったレパートリーが残されたことには大いに価値があると思っている。
確かにオケの厚みという点では不満のあるものもあるがそれはごくわずかだと思う。

この9番の演奏だが、さすが初演者だけある風格ある演奏。様々な指揮者でこの曲を聴いたが、なんだ理想的な演奏はこれだったのか!と思った。
両端の楽章をもっと粘っこく演奏したり、中間の楽章を早いテンポでエキセントリック
に演奏したりフレーズの対比を際立たせたりしたものもあるが、ワルターの音楽に対する構えのなんと自然なことか。
死の予感、慟哭、厭世感、東洋的など様々なワードで語られることが多い9番だがそれらをことさら強調することなく音楽に身を任せるがごとく流れていく。
もしこの演奏をもっと前に聴いていたらこのような感想を持っただろうか。たぶん持たなかったろうと思う。なんて温い演奏なんだと幻滅したのではないかな。
この年齢になって、なるまでにいろいろな演奏を聴いたからこそのような気がする。
腑に落ちる、というかもっとずしんと腹に響く感覚。
出会いのタイミングというのは大事であるなと。

2 件のコメント:

  1. 幸せの黒い猫2025年11月17日 7:40

    自分はそこまで深く音楽を聴けてないので反省。
    戦前の録音が残ってるのは本当人類の宝ですよね。
    言われるワルター指揮のディスク
    気長に少しづつ探してみようかなって思いました。

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    1. LPならジャケット右下にnew remasterとあるもの、CDなら35DCで始まる盤が音が良いと言われています。私は持ってないのですが。

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